「なんで、いきなりそんなこと聞くのよっ!」

「いや、なんとなく気になって?」

「ええ?それだけ?」


なんだそれ?
とあたしは怪訝な表情を浮かべる。

アイツはニヤニヤとしていたけれど、突然頭をがしがしと掻いた。
そして、


「……俺さあ」


と呟き、スッと笑みが消える。

そしてこう続けた。


「いるんだよね、実は。……好きな人」



――ドクリ、と心臓が鳴る。

自分だけ一瞬、時が止まったような感覚になった。


「そ、そうなんだ。……どんな人?」


動揺しているのを悟られたくなくて、何気なさを装ってそう聞き返す。

しかし、声がわずかに震えていた。



聞きたい。

でも聞きたくない。


あたしの心の中では、好奇心と不安が交差していた。