かずちゃんのその声に後ろを振り返ると、何時の間にか私の傍を離れて行った尚斗が、自分と同じクラスの女の子と親しげに話をしていた。
「……っ」
どくんどくんと胸が軋んでいく。
そして、私の心は何かドス黒いものに覆われていく。
「あのさー?お前ら付き合ってんじゃねーの?」
「えっ?ち、違うよ!そんな事、ある訳ないじゃん…」
かずちゃんの思い掛けない一言に焦って否定するけど、言葉の最後は尻つぼみで小さく沈んでいく。
そんな、私を見兼ねてかずちゃんは言う。
「ほら、そんな顔すんな。遅刻見逃してやるから、元気出せよ」
ぽんぽん
と、優しく頭を撫でられて、沈んだ心が少し浮上した。
「ん」
私は短く頷くと、撫でられた所に手をやって俯いたまま、「かずちゃん、ありがと」と呟いた。



