Honey ―イジワル男子の甘い求愛―



「うん。……え、掘り下げる気ならやめてほしいんだけど」

この話をしたかったから、わざわざ待っていたのかと思い顔をしかめる。

だけど宮地は「掘り下げる……とは違うかな」と歯切れ悪く否定し……目を伏せる。

いつでもヘラヘラしているのに、こんなに何かを思い詰めているような宮地は初めて見た。
宮地の周りを囲む軽く柔らかい雰囲気が、今は重たくて……鎖を握る手に無意識に力がこもる。

「鶴野にさ、聞いたんだ。唐沢が失恋したらしいんだけど、その相手誰だと思う?って。もちろん、その相手が俺たちが知ってる男って限ったらって話だけど……鶴野が変なこと言ってて」

「……変なこと?」

やっとふり絞った声が、重たい雰囲気に押しつぶされそうに震えていた。

「知ってるヤツのなかでってなると俺なんじゃねーかって、言われたんだけど」

目を伏せたまま言われた言葉に、ドク……ッと心臓が一度大きく跳ねて止まった気がした。

呼吸をするのも忘れるくらいに動揺してしまい、声が出ない。

やっとの思いで、す……っと吸い込んだ空気が、喉に張りつく。
ドッドと心臓が激しく動き出す。

鎖を握った手は、小刻みに震えていた。

どうしよう……という思い一色になった私に、宮地がゆっくりと視線を合わせる。

公園にきた時よりも暗くなった空の下。街灯に照らされて宮地の瞳が光って見えた。

「唐沢の好きなヤツって、俺?」

なにかを言わなきゃと思うのに。
否定する言葉と肯定する言葉が、まるで暴風に乗るように頭のなかを駆け巡るのに、なにひとつ声にならなかった。

あまりに唐突に図星を突かれ、心臓がドクドクと嫌なリズムをはじき出す。
呼吸がうまくできない。

目を逸らしたらいけない気がして、とてつもない緊張を感じながらもじっと見つめ返している先で、宮地は私を観察するように見て……なにかに気付いたように、わずかに目を見開いた。