Honey ―イジワル男子の甘い求愛―



「今日は特別暑かったもんね。営業大変だったでしょ。……宮地、誰か待ってるの?」

それとも、一服していただけか。

どっちだろうと見上げると、宮地が「ちょっと話そうと思って。唐沢と」なんて答えるから、ドキッとした。

だって、話そうなんて改めて言われるとなにか特別な内容なんじゃ……?と少し構えてしまう。

普通の話なら、わざわざ待ち伏せしてまでしないだろうし……。
社内でできない話題なんだろうか。

少し前の飲み会といい、この間、松田さんにチョコケーキをもらった時といい、おかしな空気になった覚えがあるだけに緊張してしまう。

なにか悟られていたりしたらどうしよう……と、不安から目が泳いでしまう。
あんなに、私の気持ちに気づいてくれてもいいのに、なんて思っていたくせに。

「駅までの裏道に、公園があるだろ。……こないだ、向井弟と一緒にいた公園」

涼太の名前を出され、びくっと肩が跳ねそうになる。
涼太とのキスとか、それを見られていたかもしれないっていう考えがよぎって。

「ああ……うん」
「そこで話せる?」

微笑んだ宮地に聞かれ……黙ってうなづいた。

支店から裏道に入ると、そこは相変わらず人通りも車の通りもなく、しんとしていた。
この間、涼太といたときよりも少し明るい空の下、街灯が心もとなく照らしている。

支店から歩いて五分も経たない場所にある公園は無人で、とても静かだった。

コンビニが二軒建つくらいの小さな公園。
遊具はブランコとシーソーくらいだ。

宮地が、ブランコの前にある柵に腰を下ろすから、私はブランコに座ることにする。

低いブランコに窮屈に座り……斜め前に見える宮地の背中を眺めた。

まだ薄明るい空に月が上がっていた。
ここに誘ったくせに何も話そうとしない宮地に緊張してしまい、なにか話題はないかと探す。