Honey ―イジワル男子の甘い求愛―




三連休が明けた火曜日、仕事を終えて駅に向かうと、涼太の姿があった。

わざわざこの駅までこなくても大丈夫だって言うのに、涼太は『おまえのためだけに来てるわけじゃねーよ。うぬぼれんな』と悪態をつきながらも、都合のつく日は必ずきてくれる。

仕事で私より遅くなる、とかいう事情がなければ毎回だ。

そのことを菜穂に話したら、意外そうな顔をするどころか、『だろうねー』と当たり前の顔して笑われてしまい……ふと、いつか言われた言葉を思い出した。

『まったく素直じゃないよね。知花のこと好きで仕方ないくせに』

『涼太、知花のこと中学の頃からずっと好きだよ。姉弟だからかそういうの見てればすぐわかるし、それに第一に、私と同じ遺伝子持ってる涼太が知花に惹かれないわけがないでしょ。私がこれだけ可愛いと思ってるんだから、涼太だって同じように感じてるに決まってるし』

まさかなぁ……と思いながら、ふたりで電車に乗り込むと、涼太はいつも通り私をドアと自分の身体の間に押し込んだ。

十九時半の電車は満員に近く、ガタンと車両が揺れると涼太の肩に鼻がぶつかってしまう。

「いた……涼太の骨があたった」
「おまえが勝手にぐらついてぶつかってきたんだろ。文句言うな」

周りの乗客を気遣ってか、潜めた声で言われる。

ガタゴトと揺れる車内。
横を向き、ドアの窓から外に視線を向けると、たくさんの明かりが流れていくのが見えた。

しばらくそうしたあと、外を眺めたままゆっくりと口を開く。

「日曜日、涼太が女の子と一緒にいるの見かけた。駅前で……たぶん、アパートに向かってたところ」