Honey ―イジワル男子の甘い求愛―



「涼太、五月くらいから言い寄られてるって話してたけど、あの子のことだったのかな」
「そうなんだ……」

五月からなら、短くても一ヶ月以上だ。

「電車で痴漢に遭ってたのを助けたんだって。そしたら、それからしつこいらしくて。告白断ったのに駅で待ち伏せされたりしてるらしくて、すっごいイライラしてた。最近はなかったみたいだけど」

「へぇ……そうなんだ」と返事をしながら窓の外を眺める。

歩調を緩めず迷惑そうにしている涼太を見る限り、言い寄られている、という表現が正しいみたいだった。

一方の女の子は、涼太の冷たい態度にめげることなく笑顔でついていっているけど……なんか、あの子……。

「あの子、知花に似てない?」

自分でも思っていたことを言われ、「やっぱり……?」と眉を寄せる。

顔立ちとかじゃなくて、髪型や服装が似ている気がする。

茶色い髪のボブカットなんて珍しくないし、服装だって奇抜なわけじゃないしかぶったって不思議ではないけど……。

「あの子がつけてる時計も知花が持ってるのと同じような……あー、こっちこないかな。ここからじゃよく見えない」

思いきり目を細め女の子を凝視している菜穂が顔を歪める。

私が今つけている腕時計は黒く丸い文字盤で、ベルトの部分はシルバーのブレスレットみたいになっているものだ。

去年の誕生日に、菜穂と涼太がくれてからお気に入りで、休みの日にはいつもつけている。
アクセサリー感が強いから会社では別のものを使っているけれど。

女の子の手首には、たしかに黒くて丸い文字盤の時計がつけられているような気もする。