「だから、涼太――」
〝安心してほしい〟
そう続けるよりも先に、背中に回った腕に力強く抱き寄せられ、声が途切れる。
ギュッと大事そうに抱き締める腕を愛しく思いながら、私も涼太の背中に腕を回した。
涼太の鎖骨が頬にあたる。
ずっと傍にいたから、こうしていると安心するし心地いいけれど、涼太のなかに〝男〟の部分を見つけてしまうと、胸がドキドキして忙しい。
心のなかには何年も前からあったのに、まるで生まれたばかりみたいな、新鮮な、涼太への感情。
それを感じていると、耳元で涼太が言う。
「おまえ、バカじゃねーの」
「なにが?」
「おまえのこと好きで堪らないって言ってる男の前でそういうこと言うとか。なにされても文句言えないからな。とりあえず、俺の部屋行く」
急に私の手をとった涼太がスタスタと歩き出すから、引きずられるようにして歩かされる。
涼太の部屋って……と、考えたら、昨日だか一昨日だかわからない甘い記憶が蘇り、顔が熱くなってしまう。
「部屋って……でも……っ」と、慌てて口にすると、涼太は顔半分振り向いて笑う。
「なに考えてんだよ。ただ、なんか買って俺の部屋で食うって話だろ」
「え……ああ、なんだ、そういう……」
「まぁ、そのあと抱くけど」
細められた瞳にただよう色気が、まるで毒でも含んでいるみたいだった。
逆らうなんて考えられないほど魅力的に見える笑みは、脅迫も同然だ。
こんなの、うなずかずにいられる人なんていない――。
自分でもわかるほどに熱を持った頬を隠すようにうつむくと、涼太がふっと笑みをこぼしたのが音でわかった。



