正直、ベッドのなかであんなにも想いを感じたことは今までなかった。

気持ちの伴わない行為をしたことはないから、今までだってそれなりにこもっていたものはあったはずなのに……。

あれは、私の勘違いだったんだろうか。
そう思ってしまうくらい、涼太との行為は濃密で……想いの強さを感じた。

だからだろうか。
掠れた声で何度も告げられた〝好きだ〟って言葉が、耳のなかでずっと響いているようだった。



『あのあと、大変だったんだから! 部屋に戻ったら知花と涼太はいなくて、なぜかお父さんがいるんだもん。しかもお見合い写真つきで! もー、断るの大変だったー』

携帯から聞こえてくる菜穂のうんざりした声に、苦笑いを浮かべながらロッカーを閉める。

昨日の日曜日の夕方、涼太が部屋まで送ってくれたから、そのあとで菜穂には電話を折り返したけれど、繋がらなかった。

そして、今日、仕事が終わり更衣室で着替えているときに菜穂から着信があったというわけだ。
バッグを肩にかけて、更衣室を出ながら話す。

「おじさん、言いだすと聞かないもんね」
『しかもさー……そんなにお見合いさせたいなら涼太にさせればいいじゃないって言ったら、なんかお父さん、〝涼太はもういいんだ〟とかなんとかニヤニヤしてて。
知花、なんか知ってる? 涼太がお父さんにお見合い話持ちかけられてたとき、一緒にいたんでしょ?』

「えっ……あー、まぁ……会ったときにでも話すよ」

涼太と付き合うことになったなんて言ったら、菜穂はどういう反応をするだろう。
普段の様子から、喜んでくれそうな気もするけれど……もしも、涼太にきつくあたったりしたら困るな。

そんな風に考えながら階段を下りていると、佐藤さんとすれ違うから「お疲れ様です」と挨拶を交わす。