急に甘さを含んだ雰囲気に緊張してしまい、パッと顔を逸らしてグラスに手を伸ばす。

こくりとひと口飲みこんでから、このしっとりと色気を含んだ空気をどうにかできないものかとグラスを持ったまま困っていると、隣から伸びてきた手がグラスを取り上げる。

見れば、涼太がグラスをテーブルに置いたところで……目が合った瞬間、トクリと胸の奥でなにかが溢れる音がした気がした。

熱のこもった眼差しに捉えられただけで、昨日散々馴らされた身体が体温を上げるようだった。

色気を多分に漂わせる目元は、もう脅迫に近く、拒否しようとする気持ちをことごとく砕いてしまう。

私を見つめたまま、伸びてきた親指がするっと私の唇を撫でる。


「飯、あとでいい?」

掠れた声に問われ、キュッと目を閉じ……〝うん〟とうなづくために、ゆっくりと口を開いた。