ドライヤーをかけなかったのか、涼太の髪はまだ濡れていた。
一方の私も、涼太の服を借りたから紺色のTシャツに白のハーフパンツという、ラフすぎる格好だし、サイズが合わないからもれなくダボダボだ。

さすがにドライヤーはかけたけど……お互い、こんな格好でピラフを食べているなんて、想像もしたことがなかっただけに、なんだかおかしくなってしまう。

「……なにニヤけてんだよ」

目ざとい涼太に指摘されて、スプーンを口に運びながら答える。

「ううん。こんな風に涼太とご飯食べる日がくるなんて夢にも思わなかったなって」

そう言ってから、涼太を見て微笑む。

「涼太の作ってくれたご飯、おいしい。今度は私がなにか作るね。……って言っても、料理とかあまりしないから、簡単なのしか作れないけど」

最後は苦笑いしながらの言葉に、涼太は驚いたような顔をしたあと、ふっと口の端を上げる。

「じゃあ、来週の土曜日にでも招待されてやるよ。でも、菜穂は呼ぶなよ。あいつが来ると色々うるせーし」

お茶を飲みながら言われる。

「え、でも、昨日も勝手に帰っちゃったのに……」
「俺があとで謝っとくからそれでいいだろ」

「でも……私からも謝りたい――」と言いかけたところで、突然、ちゅっと触れるだけのキスをされ固まっていると。

鼻先が触れそうな距離で留まっている涼太が、私をじっと見つめて「しばらく独り占めさせろ」なんて言ってくるから、ピラフがまだ半分も残っているのに食欲がどこかに飛んでしまった。