触れてきた大きな手に、恥ずかしくなり両手で顔を覆っていると、涼太が「俺も、言っておくけど」と私を組み敷いた体勢のまま話し出した。
涼太は私が顔を覆っている手をはがすと、その指先にキスをする。
そして、そのまま真っ直ぐな眼差しを向けてきたりするから胸が跳ねた。
「おまえは、俺にとっては〝どこにでもいるような普通の女〟じゃない」
強い想いのこもった瞳で告げられ、息が止まる。
しばらく見つめ合ったあと、どちらともなく、唇を合わせる。
涼太が、息が苦しくなるくらい長いキスをするせいで「うん」と返事をするのが遅れてしまったし……あまりに夢中になりすぎたせいで、菜穂からの着信も気付くのが夜になってしまったし、結局、念願のシャワーを浴びられたのなんて翌日の朝だった。
「ところでおまえ、あいつのことちゃんと断ったって言ってたけど。あいつ、納得してたのか?」
シャワーを浴びて部屋に戻ると、先にシャワーを済ませていた涼太が聞いてきた。
ローテーブルの上にはピラフがのったお皿がふたつ置いてある。湯気が上がっているところを見ると、できたばかりのようだった。
「うん。逆に困らせてごめんって言ってた。……涼太、料理とかできるんだね。知らなかった」
白いTシャツに、グレーのスウェット姿の涼太は、グラスにこぽこぽと冷たいお茶を注ぎながら答える。
「冷凍のを炒めただけだし、料理でもなんでもねーだろ」
「そうでもないよ。やらない人は本当にやらないし。……あ、ありがと」
グラスを持ってきてくれた涼太にお礼を言う。
それから、「じゃあ……いただきます」と言うと、涼太も短く「ん」と返し、スプーンを持った。