「親父? なんだよ。なんの用?」
「おー、涼太! それに知花ちゃんもいたのか! ふたりとも久しぶりだなぁ」

涼太と菜穂のお父さんが、豪快な笑みを浮かべる。

まるで海賊のお頭みたいなおじさんを、〝これ、お父さん〟と菜穂に紹介されたときには少し戸惑った。

あとから、しっかりと血の繋がりがあるって教えられてホッとしたけど……それくらいにどこも似ていない。

涼太と菜穂の、とても繊細で整った顔立ちは、完全にお母さんから引き継いだものだって話だ。

それを、他でもないおじさん本人から『まぁ、母さんに似て正解だよなぁ』と、ハッハッハという笑い声と一緒に告げられたのは、私が高校生の頃だった。

豪快で、人がよくて……そんな性格は変わらないなぁと思いながら「お久しぶりです」と挨拶を返していると、隣に立つ涼太が「で、なんの用だよ」と飾り気のない言葉をぶつける。

仕事を抜けてきたのか、Yシャツ姿のおじさんは、涼太や菜穂のこういう態度は慣れっこなのか、気にもしない様子で「まぁ、とりあえず座らせてくれ」とリビングに入り、ドカッとソファに腰掛ける。

そして、私と涼太がその向かいに座ったのを見てから「そういえば、菜穂はどうした?」とキョロキョロと部屋を見渡した。

「砂糖買いに行ってる」
「そうか……。なら、まぁ、涼太。とりあえずおまえからでいいか」