「まぁ、せいぜい悩めよ。俺からしたらどうせもうとっくに長期戦だし」

その意地の悪い言葉が、軽い声のトーンが、わざとなんだってことに気付いて、下ろした両手をそれぞれ握りしめる。

「もう少しだけ待ってて」
「は?」
「曖昧な態度しかとれなくてごめん。でも……ちゃんと考えて答え出すから。少しだけ、待ってて」

私が真剣に言っているんだとわかったからか、涼太の顔つきが変わる。
凛とした表情になった涼太は私を見つめ返したあと「ああ」と短く返事をし……そして、偉そうに笑う。

「仕方ないから待ってやる」

ぽん、と頭に乗せられた大きな手に、まったくいつの間にこんな大人の男になったんだと思う。

私が涼太の立場だったら、告白の返事を待たされるなんて怖くて仕方ないし、きっと涼太だって怖くないわけじゃないと思う。

それなのに、表情には出さずにいる頼もしい横顔を見つめてから、キュッと唇を引き結んだ。

涼太が今日、あの女の子に対してしっかりと向き合い答えを出したみたいに、私もそうしなくちゃダメだ。