「おい、なにして……」
「あの子の言ってたことは正しいよ。私はずっと涼太のことどっちつかずの態度で苦しめてる」

目を逸らさずに言うと、涼太は驚きを浮かべてからバツが悪そうに目を伏せた。

静かな住宅街。
遠くを走る電車のガタゴトという音が聞こえていた。

「おまえにとって、俺が十年近く弟に近い存在だったっていうのはわかってる。そんな俺に好きだとか言われたって戸惑わせるだけだってことも。
おまえがどっちの答え選んだとしても、少なからず菜穂とか俺との関係は変わるし悩ませてんだろうなって思ってた」

首のうしろのあたりを触りながら落ち着いたトーンで涼太が続ける。

私を傷つけないようにと考えてくれているのか、言葉をゆっくりと選びながら話しているみたいだった。

「おまえは、いつまでも返事が出せなくて申し訳ないとか思ってんだろうけど。でも俺は、おまえが俺のことそういう対象として見て悩んでる今の状況は……なんつーか、悪くない」

言いにくそうにしながらも頑張って伝えてくれている涼太に、「……悪くない?」と首を傾げる。
私だったら絶対に苦しいと思うだけに疑問に感じていると、まだ目を逸らしたままの涼太が答える。

「あいつと並べてるってことだろ。俺はどうにかしておまえのその場所に入り込みたいって思ってたから」

最後、目を合わせて「だから、悪くない」とハッキリと言った涼太に言葉を呑む。

つまり涼太は、私が宮地と涼太を同じ部分で……恋愛対象として見ていることが悪くないって言いたいんだろう。

今まで私は、涼太を弟枠みたいなところから出して考えたことはなかったから。

ぎゅっと奥歯をかみしめただ見つめていると、涼太はそんな私にふっと意地悪く笑った。