「なに。説教したいならすればいいだろ」
とぼとぼと歩いているとき、一歩前を歩いていた涼太が顔半分振り向いた。
アパートの最寄駅からの帰り道。
もう駅から離れ住宅街に入ったから、人通りは少なかった。
電車の中でもここまでも、私がなにも言わずに黙っているから、さっきの女の子への対応に不満があるんだと思ったんだろう。
また、前を向いた涼太の隣に並びながら「お説教なんてないよ」と答えると、じとっとした目で見られる。
等間隔で街灯が立ってはいるけれど、圧倒的に足りていないせいで道は暗かった。
「嘘つけ。ずっとなんか言いたそうな顔してる」
「本当になにも思ってないってば。あの女の子、タフだったなぁとか、これで諦められるかなぁとか考えてただけで。
……言葉自体はキツく感じたとしても、涼太の態度が間違いだとは思わないし」
むしろ、曖昧な態度を取り続けるよりもよっぽどいい……と考え、私の態度は涼太にどう映っているんだろうと思う。
どっちつかずの、ひどい態度に映っているんだろうか。
だから、あんな傷ついた顔をしたのかな……。
〝迎えにこなくて大丈夫〟だと告げたときの涼太の顔を思い出し胸を痛ませていると、涼太が私から視線を逸らし、前を向く。
「未練残されても、あっちも俺も困るだけだろ」
「そうだよね……」
そう返事をしてから、足を止め……ぐっと顔をあげた。
そして、私が立ち止まったことに気付き振り向いた涼太をじっと見つめる。