「さっき菜穂を年寄り扱いしてたの、涼太でしょ」
「うるせぇな。おまえに年下とか言われると腹が立つんだよ。バカにされてるみたいで」

不貞腐れたみたいに言う涼太に「そんなつもりないよ」と、やれやれと笑みをこぼしてから、園全体が地図のように描かれたパンフレットを広げた。

今日は暑いし、人混みにももまれてたしかに疲れてはいるけれど、やっぱり久しぶりだからか胸はワクワクしたままだった。

「私、ここ来たの四年ぶりくらいなんだけどやっぱり楽しいね。混んでるのわかっててもつい来たくなっちゃうのわかる。
涼太はどれくらいぶり?」

丸いテーブルに広げたパンフレットを見て聞くと、涼太も身体を乗り出して地図に視線を向ける。

「俺も四年ぶり。四年前、おまえと菜穂と来たろ。それが最後」
「あ、じゃあ一緒だね。なんだ、あれから来てないの? 大学の友達とかと」

私と菜穂は社会人になって時間もなくなってしまったけれど、涼太は違う。
四年のうち三年くらいは大学生だったわけだから、友達と遊びにきててもよさそうなのに……。

そう思って見ていると「混んでるとことか、嫌いなんだよ」と、本当に嫌そうに言われてしまった。

「電車とかで、知らないヤツと肩がぶつかったりするのも嫌なのに、わざわざ混んでる場所に好き好んで行きたくない」
「え……じゃあ、今日はなんで――」
「おまえが来るって聞いたからに決まってるだろ」

真っ直ぐな眼差しで告げられ……撃ち抜かれた気がした。

いつもはちっとも素直じゃないし、むしろ悪態ばかりつく涼太が急にこんなことを言ったりするから、無防備な心を直に掴まれてしまい……苦しくなる。

人混みが苦手なのに、私が行くからってだけで付き合ってくれる涼太の隠れた想いの強さを再確認して、キュッと唇を引き結んだ。