「幼なじみが今まで向けてくれていた優しさに気付いて、心が痛んでるわけか。まぁ、気持ちはわかるけどなぁ。……だったら、ひとつ聞いてみれば? その子に」

「え?」
「幼なじみからの優しさに気付いて、どう思ってるのか。ただ申し訳ないって気持ちだけなら、それは友情とかの類だけど、知らず知らずのうちに与えられてた優しさを知って、嬉しいって思ったなら、それはその幼なじみが好きだってことだと思うから」

黙ってしまった私を見て、松田さんはにこっと目を細めた。

「実を言うと、俺もそんな感じだったからさ。今までは気持ちを向けられても面倒だなぁとしか思わなかったのに、彼女が自分を好きだって知って嬉しくて、それで気付いた部分が大きいから。
その友達にあてはまるかはわからないけど、ひとつの基準にはなるかもしれないし」

「基準……」
「片想いしてきたヤツに告白されたときと、幼なじみの想いや優しさに気付いたとき。どっちが嬉しかったか。それが答えのような気がするけどなー」


どちらが嬉しかっただろうと考える。

宮地の言葉か、涼太の言葉か……。
私は、どっちが大切なんだろう――。

ぼんやりと輪郭しか浮かばない答えに目を伏せてから「そうですね。ありがとうございます」と松田さんに笑顔を作った。