Honey ―イジワル男子の甘い求愛―



「とりあえず、服の真似だとかは置いておいて、理由はどうあれアパートまできたりする行為は迷惑なのでやめてください。
それで、今はなんの用でしょうか」

顔立ちが違うとしても、同じような服と髪をした子と向き合っているのはあまりいい気がしない。

だから単刀直入に聞くと、腕組みをした女の子はきつい眼差しを私に向けた。

「心配しなくても、唐沢さんのアパートなんてもう行きません。ただ、名前が知りたかっただけですし、向井さんが好きだから唐沢さんのこと調べただけであって、唐沢さん自身にはなんの興味もありませんから」

それは本当なんだろうけど、だとしても色々調べられたら気持ちは悪い。

だけど、この子もこれ以上調べないって言ってるならまぁいいかと思い見ていると、ギン、とそれまで以上に厳しい眼差しで「向井さんを解放してあげてください」と告げられた。

「……解放?」
「中途半端に期待させて繋ぎ止めておくなんて卑怯です。向井さんの気持ちに応えるつもりがないなら、さっさと振ってあげなきゃ向井さんが先に進めないじゃないですか!」

強い口調にポカンとしてから……ああ、そうかと思った。

涼太を想っているこの子からしたら、私の態度は曖昧に見えたのかもしれない。

ここ最近感じていた視線は、十中八九この子だったんだろう。
だとしたら、涼太が私を送ってくれていることも知っているだろうし、休みの日に会ったりしているのも知ってるかもしれない。

それだけ会っていながら、気持ちに応えない私を、ズルいと思ったってことかと納得する。

よく、菜穂は宮地のことを〝傍にいて優しくして期待させるだけさせてズルい男〟みたいに言うけれど、きっとこの子から見たら私が同じように見えたんだろう。

そう考えて……今までの涼太の気持ちを考えると胸がズクンと痛んだ。