ぷんぷんと音でもしそうな怒った顔で言われ、やっぱりホラーだ……と思う。

部屋がバレてるってところに怖さを感じ、バッグの中から咄嗟にスマホを取りだす。
いつでも助けが呼べるように。

私のその行動を見ても焦る様子を見せない女の子は、眉を吊り上げながら続ける。

「両替なんかしたくなかったけど、仕方なくしたんですからね。おかげでお財布の小銭入れがパンパンで、しばらく重かったんですから。
百円玉ってあれば便利だけど、百枚もあったら邪魔なだけですし」

両替手数料がかかるのは百枚からだから……話を聞く限り、きっと一万円札を百円玉百枚に両替して領収書を手に入れたんだろう。

それはたしかに重たそうだな、と落ち着いてきた頭で考える。
個人での両替の場合、小銭を大きくまとめることはあっても逆はまれだ。

「……なんで、私の名前なんかを知りたかったんですか? あと、もしかして服とか髪とか、真似してますか?」

これで女の子が真顔だったり、おかしな笑みを浮かべていたりしたら、こんな風に私から聞いたりもできなかっただろうけど……。

ぷりぷりと怒る女の子は、落ち着いてみるとそこまで怖く思えなかった。

それでも恐る恐る聞いた私に、女の子が口を尖らせ答える。

「だって、向井さんがちっとも教えてくれないから、仕方なく。SNSとかやってるなら突き止めて情報収集とかしたかったし。それに、一応、ライバルの名前くらい知っておかないと気持ち悪いでしょ」

気持ち悪いのは、こっちのほうだ。
部屋までつけたとか、名前知るために支店にきたとか……。

SNSをもしやっていたら、過去まで遡って調べられたりしていたんだろうか……。気持ち悪いな。