どうしてこうも運がないのか。

競技に何も出なかったわたしにとって、体育祭はただただ公開告白をされてキス未遂をみんなに見られるという恥ずかしさで地に埋まりたいだけの日になってしまった。



しかも。

今回に限って、ご褒美に"パートナー"を用いる。



ということで。



「……不満そうだな」



「いえ全然」



11月初旬。

すっかり体調の治ったいつみ先輩とわたしは、そのご褒美ウォークラリーに向かうバスの中にいた。



……だってどうしようもなかったんだもの。

全校生徒の『姫川さんのペアは珠王先輩だよね?』という決めつけた視線が痛かったんだもの。




キスしてなかったんです、とは言い訳できず。

それに仲の良い女の子はみんな同じクラスだし、みさとは大和のパートナーだ。



そうなればロイヤル部の中から誰かを選ぶしかないわけで。

でも違う誰かを選べば、絶対に何か言われる。



もし文句を言われないのなら、ルアか夕帆先輩のどちらかが良かった。

莉央も安全牌扱いではあるけれど、あのふたりはわたしの中の癒し要因だ。たまに夕帆先輩もクラッシャーになるけど。



「………」



わたしたちを見送る時の、みんなのあのニヤニヤとした笑みを思い出すだけでため息が漏れる。

いつの間にかいつみ先輩以外のみんなには、わたしが彼を好きなことがバレているらしく。



『デートだと思って』と。

夕帆先輩の余計な発言のせいで、バスの隣に座っているだけなのに心臓が痛い。どうしてくれるんだ。



……いつみ先輩は平然としてるし。

断じてキスはしていないのに彼の風邪がどうやらうつってしまったようで、あの後わたしも体調を崩していた。そのため、ふたりになるのはそれこそ体育祭以来だ。