ふと、光を感じて目を開けると、見慣れた天井が見えた。



左を向くと、窓辺に置かれた小さな観賞植物や小物たち。


右側にはノートパソコンが置かれた机。


その横の壁には北アルプスの風景写真。


ぽつんと置かれた白いテーブル。




私の部屋だった。



「夢か…」


あまりにもリアルな夢。


「やだな…」

腕を額にのせると、ため息をついた。


少し反動を付けてベッドから脚を下ろすと、しばらく両手で顔を覆っていた。


外から鳥の鳴き声が聞こえた。

私はその鳴き声に誘われるようにゆっくりと立ち上がると、窓の外を見た。

レースのカーテンの向こうで鳥が手摺りから飛び立つのが見えた。

「ごめん」

私はそう呟くと、ゆっくりと後ろの壁の鏡を見た。

顔色は良くないが、肌の調子はいいようだ。

起き抜けはあんな夢を見たが、たっぷり寝ていたということだろう。

時計を見ると、いつも起きる時間だった。


仕方がない。

とりあえず会社へ行くことにした。

いつものように身支度をして、いつものように着替えて、いつものようにバス停に向かった。




最近、私は会社に行くのが嫌になっていた。

ヒステリックに怒鳴り散らすだけの上司。

他人を出し抜こうとする同僚。

仲の良い真奈美も、同じフロアで顔が見えるとはいえ、別の編集部に移ったから私をかばえなくなった。

元々やりたかった仕事じゃない。

そろそろ限界を感じて、うつ気味になっていた。


だから、本当は会社に行きたくない…


そんな気持ちが、あんな夢を見せたのだろう…