【短】ぜんぶ、夏のせい








「好きだよ。みずきのことが好きだ」




先生の顔が日に照らされて、よく見える。


頬が赤く見えるのは、太陽のせいかな。


それとも。




「あんま見んな」


「ふふ。先生可愛い」


「黙って」




太陽のせいではないようだ。


意外にお茶目なところがあるんですね。





「せんせ、好き」


「知ってるし。おまえ顔に出るからずっと前から知ってたし」




分かりやすいんだよ、と照れ隠しのように唇を尖らす先生。


何だか途端に可愛いなあ。




「せんせ」


「ん?」


「私、春でも秋でも冬でも、もちろん夏でも、検診のない日でも先生に会いに来ます」





そういえば、先生が私のおでこをつついた。





「ばーか」


「なんでっ」


「こういうのは彼氏が迎えに行くものだろ」




隠しきれていない先生の赤い顔に笑いが込みあげてきた。


彼氏、という響きが新鮮で、世界が全く違うものに見えた。





「いつでも迎えにいくからずっと俺の近くにいろ。倒れるなら太陽じゃなくて俺でにしろ」





なんてキザなこと言っちゃって。


先生は恥ずかしそうに笑って、熱のこもる私を自分の腕の中に閉じ込めた。