長いキスの後、耳元で先生の声が響いた。
「みずきだよ」
「っ、何が」
「ここまで受け入れといてわからないはなしだぞ。しらばっくれんな」
受け入れるというのは、キスの話しだろう。
しらばっくれているつもりはないのだが、まだ。
「……先生」
「まだ不安なのかよ」
あきれた物言いだが、私の不安を取り除きたいと考えていてくれていることが分かる。
「あのね、私のこと好き?」
「うん」
「…そうじゃなくて、ちゃんと好きって言って」
「うん、ちょっと恥ずかしいな」
鼻の下を触る先生。なんだか可愛い。
「おまえがここに来る回数は少ないことが医者にとっては嬉しいんだけどな」
「じゃあ、先生自身としては?」
「もうずいぶん前から、夏が来るのを待ってた」
「ってことは?」
「何が何でも言わせたいんだな」
くすりと笑う先生。
日が昇って、窓の外が明るくなってきた。
太陽が顔を出して、月に挨拶をする、そんな時間。



