【短】ぜんぶ、夏のせい





ぐちゃぐちゃの顔を彼に見られていることが、すごく恥ずかしい。


恥ずかしくてたまらないのに。


ほとんど彼のことが見えないのに。





「やだ……っ」





私は彼の目を一心に見つめた。




彼はというと、優しげだった笑みもより一層優しくして、私の頭を撫でた。


流れでそのまま、前髪をかきあげられ額にキスを落とされる。


これは、何のキスですか…?




「あの、恋愛している相手、って、その…っ」




瞼に、頬に、首筋に、彼の唇が滑る。


知らない刺激に体が小さく揺れる。




「誰だと思う?」


「やっ」




ふいに耳元でそう言われて、肩が文字通り跳ね上がった。



「俺の好きな人は」


「待って。言わないで…」


「どうして?」


「傷つきたくない」




そう言えば、楽しげに笑われた。




「馬鹿だな、ほんとに」


「やだそこで話さないで…! 耳、やめてくださいっ」


「やめない」




ふう、と耳に息が吹きかけられてまた肩が跳ねる。