【短】ぜんぶ、夏のせい





彼の顔は暗い夏の夜空に溶け込んでいて、揺らめいている。


涙で、前が見えなかった。




「おまえの姉と俺の関係、聞く?」


「っく、やめてください」




病院でたまたま見た、私とは似ても似つかぬ美人さんなお姉ちゃんと彼が並んで立つ、華やかなオーラが、2人の笑顔が、フラッシュバックする。


涙がとめどなく溢れる。




「なあ、聞く?」


「やめて…」


「まあ聞けって」




医者とは言えど未だ他の医者よりも幼さの残る顔が、優しく笑う。


なんでそんなに、優しく?





「恋愛カウンセラーと依頼者の関係だよ」


「っへ?」




言われて気がついた。


確かにお姉ちゃんは副業として恋愛相談を兼ねたカウンセリングを仕事にしている。


ということは、彼はお姉ちゃんに恋愛相談をしていた、それだけだということになる。


ホッとしたのもつかの間。




「恋愛、してるんですか」




泣きすぎて、涙が出なくなってきました。



いつだって私は妹のようにしか見てもらえてないから、絶対相手は私じゃない。