【短】ぜんぶ、夏のせい






だから、つい口が滑った。




「そもそも! 付き合ってなんかないでしょう!」




言った後で激しく後悔した。


これじゃ、さっきまでの努力が水の泡だ。



彼は目を丸くして、視線を下げて、もう一度上げた時にはからりと笑ってみせた。




「……覚えてるんじゃん」


「死にたい」


「軽々しく死ぬなんて言わない」


「あなたのせいです」




自分に言い聞かせてまで、全力で忘れたふりをしていたのに。


真正面から睨み付けると彼は嬉しそうに笑った。


なに笑ってるんだか。


なんでお日様は隠れてしまっているのだろうか。


今こそ出番だというのに。




「顔、赤いよ」


「赤くないです」


「赤いって。そんなに恥ずかしい?」


「だっ……!」


「しー。今3時なんだから」




口を彼の平でふさがれ、顔に熱が集まる。


3時に患者の部屋に密会にくるこの人、大丈夫なのかな。