それからしばらく私たちは、いろんな場所をその2年前の順番で巡った。


植物園。

悟に最近覚えた花言葉をたくさん説明した。

悟は花粉症じゃない。

私も。


映画館。

悟は涙もろかった。

ハンカチを貸した。

悟が「洗って返すよ」と言ったけど奪った。


ハーバーランド。

悟は骨董屋もやっているから、雑貨が好き。

アイスは抹茶系が好き。

海も好き。


南京町。

悟は何度か炒飯を作ってくれたけど、かなりこだわっている。

それも全部種類の違う炒飯だった。

だから、悟は炒飯に厳しい。


摩耶山。

本当は六甲山よりこっちの方がすごい。

二人で言葉なく夜景を眺め続けた1時間。

(私の帰る時間がなかったら、もう1時間続いたかも)


水族館。

暗い通路、明るい水槽。そのコントラストの中で、何度か悟と手を繋ぎかけた。

浜辺で少し座って話した時、泳ぎに来た時のことを聞いた。

水着はビキニだったって…

悟の家においてあるらしい。

「だから、夏になったらいつでも大丈夫だよ」と言われた。

…無理。


そんなことを書き留めた物語もページが増えた。

晩ご飯の前に帰るのは変わらなかったけど、その間に、かなり二人の距離は近付いた。
だからこそ、何度か彼と唇を寄せかけたことがあった。

でも、私はその度に、ごまかした。

一度そうしてしまえば、もう戻れないと思っていた。

逆に、悟はそれであの頃に戻れると思っているはずだけど、彼はそれに合わせてくれた。

そんな微妙な距離感の日々だった。