私と二人の物語

「なんか、いいことでも?今日は表情が明るいですね」

主治医の篠田さんが私の顔を見て言った。

「え?そうですか?」

私は気を抜いていたことに少し慌てた。


私は、うちの病院に定期的な診察を受けに来ていた。

彼は、篠田卓司さん。

32才。

武井病院脳外科医。

背は高く、知的なメガネなのに冷たく感じさせず、物腰も話し方も柔らかで、素敵な感じの人。

彼に説明とか受けると、きっと患者さん達も安心すると思う。

それに、自分の腕を磨くことに手を抜かないと聞いているし、実際そんな感じ。

篠田さんは、ある意味、命の恩人。

私はあの事故で手術を彼にしてもらった。

彼だから成功した手術だと風の噂で聞いた。

そんな風に、うちの病院で一番の腕を持ち、行く行くはこの武井病院の次期院長と目されている人。

要するに、姉の婚約者だった人。

姉が亡くなったことによって、そういう結婚をしなければならなくなった私にとって、いずれ婚約者となる人。

だから、私は篠田先生と呼ばずに、篠田さんと呼ぶ。