顔は確かに妻だった。

だが、身体は?

彼は、足の方に行くと、シーツの端を持った。

そして、ゆっくりとめくった。

遺体の素足が見えた。

広田は息を飲んだ。

妻の足ではなかった。

広田はシーツを思いっきりめくった。

首と身体が離れているのを見ると、目を背けたが、その身体を確認した。

胸の辺りのホクロ、左腕の傷、そもそも、身体の体型が全てが違っていた。

「広田さん…え、ちょっと何やってるんだ!」

丁度様子を見に入ってきた刑事が、広田がめくっているシーツを取り上げて、また遺体の上に掛けた。

「ちょっと、あんた、奥さんの遺体に何をやってるんだ!」

「刑事さん、この身体は妻じゃないです」

「はあ?さっき奥さんだと言ったじゃないか」

「いえ、違うのは身体の方です」

「え?」

「だから、この身体は妻の身体じゃありません」

「いや、ちょっと何言ってるんだ、あんた」

「どうした?」

そこで、もう一人の刑事も入ってきた。

「いや、旦那さんが混乱している様で」

「違う、だから、この身体が…」

「分かったから、もうここを出た方がいい」

広田は二人の刑事に抱えられて部屋を出されてしまった。

その後、何度も身体が妻ではないと訴えたが、刑事は取り合ってくれなかった。

発見時の状況から、警察では頭部と身体が別人だと思ってはいなかった。