ようやく校舎の外に出ると、
校舎内よりも外の方が人通りが多くてびっくり。

普段は自由に通れる空間も、
今はロープで仕切られ、巡回経路が決められている。
交通整理のせいもあって、人の流れに乗っていけない。

「あぁ、体育館、
 遠回りしなくちゃいけないね」

「本当だ」

それはいい、仕方がない。
制服を着た私たちに、
小さな子供連れのお母さんが
行きたい教室の場所を聞いてくるのも仕方ない。

それで、松永と私が
わざわざそこまで連れて行ってあげるのも
仕方なしとすべきだろう。

だがしかし、その帰りに見つけた教室で
同業者のライバル偵察! とか言って
なぜわざわざ他教室で
ヨーヨー釣りをしなければならないのか。
自分とこでもやってるのに。

やっとその教室を出たと思ったら
今度は、きららと紗里奈、一樹と酒井地蔵の
ご一行さまとばったり遭遇。

「やだぁー、2人で
 学園祭、まわってるの?」

「いや、たまたまね」

松永は慌てて否定する。
そうだよ、たまたまだよ松永、
私が行きたいのは、体育館!

松永が立ち話を始めるから
余計な口を挟まず、
早めに切り上げさせる。

「ね、早く行こ」

お前がついてくる必要性はないのだが
このまま、この酒井地蔵ご一行衆と合流してしまえば
私の体育館行きが微妙な展開になってしまう。

今度は私が、松永の制服の裾を引いた。

「あ、うん、行こっか」

ようやく松永が動き出した。
酒井地蔵教一派がにやにやと見送る。
それでも、だらだら歩く松永。
私は、のんきな松永を牽制するように
わざと足を早めた。
これ以上、寄り道をされたら、たまらない。

「なにか、見たいイベントでもあったの?」

前を行く私に、懸命についてこようとしている松永が
くだらない質問をしてくる。

「だって、今日の12時までなんだもん、
 川本くんの司会担当」

松永の足が止まった。

ん? どうした松永、
ここでさらにトイレとか言い出したら
悪いが私はお前をおいて
先に体育館に行くぞ。

「それが、見たかったの?」

「うん」

他になにがあると言うんだ。
初日午前の公式イベントなんて
校長の話しとか、学校紹介とかの
外向き真面目PRしかないだろ。

黙ったままの松永の動きが止まったから、
もう置いて行くことにした。
本気で間に合わない。

松永の顔は硬直して、
なんだか怒ってるみたいな
ちょっぴり怖い顔になってるけど
そんなことに、構っている暇も
この状況を分析している余裕も
私には残されていない。

「行きたくないなら、別につき合う必要ないよ
 私、先に行くね」

私は松永を置いて、前を振り返った。

振り返った目の前には愛美が立っていて
雑踏の中、1人でビラを配っていた。
その顔は、笑っているようで
笑ってない。

「まなみ……」

落雷
その瞬間、私の頭に、雷

「ねぇ、愛美!」

私は、愛美の手から
ビラの束を取り上げる。

「体育館に、川本くん、見に行こ!」

強引に愛美の手を引く。
取り上げたビラは、
後ろにまだ立っていた松永に託す。

「じゃ、コレよろしく!」

もう、誰にも邪魔させない。

私は愛美の手を引いて
体育館へと向かった。