ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。

「ひどいじゃないですか!」

「うん。でも試合があるし……」


だからそのまま練習をすると?


「ダメです。病院に行ってください」

「次も登板するかもしれないんだ」

「でもピッチングには小指も大切ですよね?」


投げられないことはないと思うけど……。


「よく勉強してるんだね。そう。小指では握らないけど、小指の曲げたり伸ばしたりという動作は意外と重要」


たしか、指の動きひとつで腕の回転に影響するはずだ。


「わかっているなら、病院に行ってください」


万が一折れていたら……と心配だ。


「けど、なんとかなるよ。それに、次の試合もおそらく途中から……」

「夏の甲子園、目指さないんですか?」


私は彼の言葉を遮った。

目先の勝利も大切だ。
でも、高校球児なら皆、夏の甲子園を目指していると思うけど、違うの?


私がそう言うと、彼は黙った。