ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。

彼はあれから大活躍をしている。

甲子園には届かなかったけれど、何度もチームの危機を救い、一年生なのに頼れる大黒柱的なピッチャーなんだとか。

秋季大会も今のところ二年生が先発しているものの、実質的なエースは真田くんで、温存しているのだと聞いた。


「よかったです」

「名前聞いていい?」

「はい。波多野栞と言います」

「俺は真田慎司(しんじ)。知ってるか」


優しい笑顔を見せてくれる真田くんは、ベンチ裏で顔をゆがめていた彼とは違った。


「駅まで行くなら、一緒に行かない?」

「はい」


思えば桜花高校も同じ駅を使う。
今まで会わなかったのが不思議だ。

それから私たちは肩を並べて歩き出した。

この道は大河とは一度も一緒に歩いていないのに、なんだか不思議だ。


「あっ、消毒持ってない?」

「ありますよ。ケガですか?」

「マメがつぶれて……」


消毒液と絆創膏は常に持っている。
私はカバンから取り出し、道の端に寄って彼の手を消毒し始めた。