ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。

旭日よりずっと恵まれた環境にいるのに……と思い口を開くと、彼は小さく首を振る。


「争いなんだ」

「争い?」

「九人しかグラウンドに立てない。誰かを蹴落とさなければ、ボールを握ることすらできない」


それを聞いてハッとした。

桜花の部員は百人近いと聞く。

そこからベンチ入りできるのが十八人。
更に試合に出られるのが九人。

途中交代はあるとしても、約一割しか表舞台に立てないということになる。

旭日よりそうした争いは過酷なんだろう。


だから、仲間にですら弱みを見せたくないのかもしれない。


「そうですね。でも、傷が化膿したらますますレギュラーが遠のきますよ。私でよければ治療しますから、またどこかでお会いしたときは遠慮なく声をかけてくださいね。あっ、行かなくちゃ」


バッグに消毒を放り込み、ペットボトルの水を持とうとすると、彼がスッと持ち渡してくれた。