ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。

相手の高校が先にシートノックを始め、旭日の選手はストレッチや短い距離のダッシュを始めた。
体を温めて動くようにするためだ。

その間、私はマイクロバスから飲み物を運んでいた。


何往復もしていると、ベンチ裏の暗い通路に、どこかの選手がいるのを見つけた。


「あの……」


私が思わず声をかけたのは、その選手の右手から血が流れていたからだ。


私の声に気づいて体をこちらに向けたその選手は、桜花高校のユニフォームを着ている。

彼は大河より背が高く、体つきもがっしりしている。

それでいて二重の目は優しそう。大河より少し細面のその人は、顔が土埃で汚れてしまっているが、その汚れが似合わないと思ってしまうような整った顔立ちだった。

そして、少しくせのある短めの髪から、汗がしたたり落ちている。


「手、見せてください」

「あ、いいよ」

「ダメです。私、救急用品持ってますから」