ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。

「はー」

大きく深呼吸すると、大河は表情を緩める。


「お前がそんなに緊張してると、俺、なんか余裕になってきた」

「なに、それ……。あっ、大河。手、出して」


私は持ってきたテーピングテープを、マメがつぶれている手に巻いていった。


「応急処置だから。もし投げにくかったら外して」


彼が投げることを信じている私は、‟きっと投げられるよ”という意味を込め、そう口にした。


「サンキュ。栞、テーピングうまくなってきたな」


すると彼に伝わったのか、表情が柔らかくなる。


「大河の球速が速くなるのと一緒じゃない?」


テーピングの技術と彼の努力は、とても天秤にかけられるものではないけれど……。
これがマネージャーである私の仕事だ。


「そっか。それじゃあ今日、百五十キロくらい出ちまうな」

「うん、出ちまう」

「真似するな!」


大河が「あはは」と声を上げて笑ってくれた。

選手をリラックスさせるのも、マネージャーの仕事の一環だ。