「ちょっとー、ボサボサになるって言ってるでしょ!」


口を尖らせ怒ってみせるのは、照れくさいからだ。

毎朝、まるで義務のように繰り返される行為は、密かに彼に恋をしている私の胸を高鳴らせる。
彼は私をからかっているだけなのかもしれないけれど……私は彼に触れられてうれしくてたまらない。

頬が赤らんでいないか不安になる私とは対照的に、彼はいたって平然とした顔でカレーパンの袋を破り口に入れた。


「もう、いい加減ちゃんと起きたら? おばさん怒らない?」


菓子パンの種類は変わるものの、この光景は毎日のことだ。


「怒ってるよ。最近は呆れて飯も用意してない」

「そりゃそうだよ」


毎日食べないんだから。まったく。


「栞がちゃんと起こさないからだろ」

「はぁっ? 着信履歴見た?」


今日は四回目で起きたけど、彼は最高で八回という不名誉な記録保持者だ。


「まぁ、細かいことはいいじゃん」

「ホント、勝手」


私が「はー」と大きなため息をつくと、彼はクスクス笑った。