ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。

「悟、平気か?」

「うん、普通に話せてるし、大丈夫」


私が伝えると、大河はホッとした顔を見せる。


「ねぇ、大河」

「なに?」

「本山くん、もっと頑張りたいって言ってた」

「そっか」


仲間がやめていくことに心を痛めていた彼を安心させたくて言うと、彼は学校では珍しくにっこり笑ってくれた。


朝練のあとは、教室にダッシュ。
大河とは偶然同じクラスで、C組の野球部員は私たちふたりだけだ。

ホームルームが始まる前、いつも”菓子パンその二”をカバンから取り出して一気に食べるのが大河の習慣。

朝食はカレーパンだけだったのだから、お腹が空くのは当たり前だ。


「大河、俺にも少しくれ」

「ダメだ。足りないくらいなんだから」


大河には友達がたくさんいる。
でも、教室でもやっぱり私には素っ気なくて、私たちが幼なじみだとは知らない人のほうが多い。

私より少し前の席の彼は、それからすぐにやって来た担任の話をスルーして、必死に私の英語のノートを写し始めた。


そしてホームルームが終わると、宿題を写し終えたノートを、「サンキュ」と私にだけ聞こえるような小さい声でさりげなく置いていった。