ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。

でも、私に泣く権利なんてない。
真田くんと話してしまい、彼を傷つけたのは私だから。


彼に声をかける勇気もなくうつむいていると、「大河」と、廊下から本山くんの声がした。


「お前、サボりってどういうことだ」


つかつかと教室の中まで入ってきた本山くんは、大河からパンを取りあげ声を荒らげる。


「寝坊したんだ。すまん」


大河はそう言うけれど、そうじゃない気がする。


「お前、ひとりで野球やってる気になるなよ。たしかにお前はうまいし、俺なんかじゃ足もとにも及(およ)ばないさ。でも、お前がここまでやってこられたのは……」


そこまで言った本山くんは、口をつぐみ私に視線を送る。


「とにかく、練習には来い」


本山くんはそう言いのこして教室を出ていった。

ありがとう、本山くん……。
だけど、やっぱり私が悪いの。

再びパンを食べ始めた大河は、今日はほかのクラスメイトと話す様子もない。

私は彼の大きな背中を見つめながら、唇をかみしめることしかできなった。