「イヤだ……。明日の保証がないなんて、そんなこと言わないでよ。いくらでも未来のことを話さそうよ。……大人になってよ、津崎」
いつまで過去の世界にいられるか分からない。
それでも戻る時がきたら、津崎も一緒に連れていく。引きずってでも16歳のままでは終わらせない。
「……お前、なんか知ってんの?」
ざわっとした風が私たちの間を通り抜けていく。津崎の瞳が少しだけ動揺しているように見えた。
「し、知ってるって、なにが?」
これから起こることを?
それとも別のなにか?
質問の意味が分からなくて、私も次に繋げる言葉がなかなか出てこない。微妙な沈黙が流れて、私たちは互いの真意を探るように見つめ合った。
ゴクリ、と唾を飲み込んだあと、先に口を開いたのは津崎のほう。
「いや、なんでもねえ。俺の勘違い」
私の頭はたくさんのハテナマークが浮かんでいた。それを問われる前に話を変えようと、珍しく津崎から私に質問をしてきた。
「お前は大人になった自分のこと、想像できる?」
想像するまでもない。
私は毎朝満員電車に乗り、会社に行って、上でも下でもない中間の立場で仕事をして。ストレス発散といえば強いお酒を飲むことぐらい。
「……私なんて、つまらない大人になってるよ」
ひとりだけ時間が止まったように、置いてきぼりになってる。
すると、津崎は私の顔をじっと見た。それは吸い込まれそうなほど熱く。



