ばいばい、津崎。



郵便局は島に一軒だけ。働いている職員の数も少ないし、いつも郵便物を届けてくれるのも毎回同じ人だったりする。

私は外に設置されているポストへ自転車に股がったままハガキを投函した。涼しい風は吹いているけれど、コンクリートの照り返しのせいか体が焦げるように暑い。

……帽子ぐらい被ってくればよかった。

早く家に帰ってアイスでも食べようと自転車の方向を変えていると……。私の背後でキキィというブレーキ音が聞こえた。


「あれ?」

その声に振り向くと、そこにいたのは哲平だった。

哲平の服装もTシャツに半ズボンとかなりラフな格好。暑さで溶けそうな私とは違って清々しい顔をしている。


「偶然だね。山本さんも郵便局に用事?」

「う、うん。ハガキを……」

「そうなんだ。俺も」と、哲平はポストにハガキを入れた。


哲平に〝山本さん〟なんて呼ばれると、やっぱりヘンな感じだ。それに私は何故か哲平とふたりきりだと挙動不審になってしまう。

だって頭に浮かぶのは未来の哲平のこと。


――『でも俺、結婚したい人としか付き合いたくないから』

嬉しい気持ちはある。そんな風に言ってもらえるなんて幸せ者だなって。大事にしなきゃバチが当たるなって思う。


哲平はいつだって、私に対してまっすぐだ。

私の崩れそうなほど弱い部分を許してくれるような眼差しで見つめてくる。けど、私はその瞳が苦手だった。

なにもかもを受け止めてくれる代わりに、なにもかもを見透かされているような気がして。


「ねえ、山本さんって猫好き?」

「へ?……ね、猫?」

ふいにされた質問に間の抜けた声になってしまった。


「もし暇なら見にこない?ちょうど1か月前に生まれたばっかりで可愛いから」

少し迷ったけれど哲平の無邪気な笑顔に押されて「じゃあ、ちょっとだけ」と、猫を見に行くことにした。