「寝不足?夜遊びでもしてんの?」
「ううん、違う違う。ただ眠れないというか、寝てはいけないというか……」
また私は歯切れは悪くなる。寝てしまったら未来に戻ってしまうかもしれない、なんて言えるはずがない。
「ふーん。よくわかんねーけど、倒れる前に今日は早く寝ろよ。じゃーな」
津崎はそう言ってサンダルの音を響かせる。長い防波堤のコンクリートを歩き、遠ざかっていく津崎の背中。
夕空に浮かぶうろこ雲が、まるで私の気持ちを表しているかのようにまだら模様だった。
「――津崎っ!!」
テトラポットに打ち寄せる波に負けないぐらいの大声で名前を呼んだ。
「あん?」
乱暴にその足が止まった。
「き、謹慎が明けたらちゃんと学校に来てよね!」
じゃなきゃ私が困る。津崎は野良猫のように神出鬼没だし、休むことがクセになってサボられたら大幅に津崎と接する時間が減ってしまう。
津崎はぽりぽりと頬を掻いたあと、再び歩きはじめた。
「気がむいたらな」
風にのって届いた声は、小さく挙げた右手と同じように不器用だった。



