ばいばい、津崎。




「ねえ」

その沈黙を破ったのは私だ。


「津崎って泳ぐの得意?」

どうしたって考えてしまうあの日のこと。目の前の津崎をちゃんと繋ぎ止めきゃいけないのに、救えなかったという自責の念だけが私を掴んで離さない。


「島育ちで苦手なヤツなんていねーよ」

津崎の返事はすぐに返ってきた。


「仮に落ちたとしても泳いで岸まで行ける?」

「余裕」

「波が荒れてたとしても?」

「そういう時の泳ぎ方も教わってるよ」


海に囲まれている島では、幼少の時から泳ぐ勉強は熱心にさせられると誰かに聞いたことがある。

快適に泳げる範囲から絶対に行ってはいけない範囲までしっかりと教わり、溺れた人への救助方法や離岸流(りがんりゅう)という強い引き潮に遭遇した時の対処法まで学校で学ぶ。

だからよそ者の私がにわか知識で得たものよりもずっと島の人は海の楽しさも怖さも知っている。


それでも私はあえて聞いたのだ。

あの日の出来事が事故だったのか故意だったのか。例え泳ぐのが得意で溺れることはない津崎でも、私は絶対に後者だとは思いたくない。