「隣あいてるよ」
私は平然を装いながらコンクリートを指さした。
津崎は不機嫌そうなため息をついたあと、私と少し距離を開けてあぐらをかいた。
その横顔は物思いにふけるような瞳をしていて、ぼんやりと海岸へと戻ってくる漁船を目で追っている。
どうしてだろう。
私の記憶の中にいる津崎はたしかにこのままのはずなのに、少しだけ大人びて見えてしまう。
黒く浮かび上がる影ですらとても大きく感じて、
16歳の当時よりもドキドキしてしまう理由は自分でも説明がつかない。
「じっと見んなよ」
ふいに津崎がこっちを見るから目が合ってしまった。
凝視していたことがバレた恥ずかしさで「ご、ごめん」と私は不自然に視線を別の方向へと向けた。
私たちの間には沈黙が流れて、波の音とカモメの鳴き声が交互に響いている。



