ばいばい、津崎。




海岸沿いの道を進んで、空は綺麗な黄昏色に染まっている。水面に反射する太陽を見ながら、私はそのまま防波堤を目指した。

そして長いコンクリートの上を走って、先端部分で私はようやく自転車を降りた。

海の彼方では小さな漁船が浮いていて、風にのって「ボーッ」という汽笛が耳へ届く。私は膝を抱えるようにその場に座って、穏やかな海を一点に見つめた。

考えるのは、やっぱり津崎のこと。


津崎は自分の特等席のように、この場所を陣取っていた。そして津崎は……ここから海へと落ちた。

私が確認したわけじゃない。たまたま島の住人が目撃して、津崎は立ち上がった状態でそのまま垂直に飛び込んだとその人は証言した。


津崎のことをよく知っていた私たちは『足を滑らせた可能性もあるんじゃないか』と反論したけれど、そもそもあの日の夜に防波堤に行くこと自体不可思議なことだった。


それは雨が少ないと言われている島で、60年ぶりとなる台風が直撃した日。

災害に備えるために大慌てだった最中、大荒れの海へと消えた津崎は二度と私たちの前に現れることはなかった。


私がいつまで過去の世界にいつづけることができるのかは分からない。だけど、なにがなんでも津崎だけは失えない。


「そこ、俺の場所なんだけど」

ビクッと条件反射で肩が上がったけれど、すぐにじんわりと熱いものが胸へと沸き立つ。

ゆっくりと振り返ると、そこには私の決意を断固として強くさせる失う前の津崎の姿。