西日がオレンジ色へと変わっていて、海の水面がダイヤモンドのように輝いていた。
気温は昼間とあまり変わらずに歩いているだけで、じわりと額に汗が滲む。
美貴は隣でずっと携帯をいじっていて、カチカチとメールを打つ親指が早い。
スマホで慣れてしまった私はガラケーは使いにくくて、画面の小ささにビックリするけれど10年前はこれが普通だったと、ジェネレーションギャップを感じてしまっている。
「あ、あのさ。私……鮎原さんのこと、なんて呼んでたっけ?」
剛のことがあったから、一応確認した。じゃないと、また未来の距離感で話してしまいそうだったから。
「えー普通に〝さん〟呼びだけど、なんでそんなこと聞くの?」
「いや、その……」
私は不自然に口ごもる。まさか未来から来ました、なんて言ったら一瞬で頭のおかしい人だと思われるだろう。
そんな私に美貴が首を傾げながら、携帯を閉じた。
「だって山本さん、いつもイヤホンで音楽ばっかり聞いてるし、話しかけるなってオーラがすごいから」
たしかにこの頃の私はなにもかもが悲観的で、友達作りにも積極的じゃなかったから、いつも教室では音楽ばかりを聞いていた。
「ご、ごめん……。えっと、もし良ければの話なんだけど、美貴って呼んでいい?」
過去の記憶では美貴と仲良くなったのも、もう少しあとの出来事だった気がするけれど、美貴を今さら鮎原さんと呼ぶのはぎこちなさすぎるから。
「えー!本当に?嬉しい!じゃあ、私も皐月って呼んでいい?」
「うん、もちろん」
美貴の笑顔は、未来と同じで可愛い。そしてこの人懐っこい性格のおかげで、私をいつも明るくさせてくれる存在だ。



