「あのさ、津崎の家ってどこだっけ?」
学校に来ないのなら、自分で会いにいくしかない。
「知るわけないだろ。ってか、なんで俺に聞くの?」
「た、剛なら知ってるかなって……」
いつもニコニコとしている剛が迷惑そうな顔をしていた。
……そうだ。忘れてたけど16歳の剛はこうしてコミュニティー能力はゼロで、アニメと漫画さえあればなにもいらないってぐらい、変わったヤツだった。
そんな剛があんなに面倒見のいい大人になって、しかも小学生のパパだなんて、今さら信じられない気持ちになってきた。
「そもそも俺のこと名前で呼んでたっけ?」
「えっと……」
つい10年後のテンションで話しかけてしまったけれど、考えてみれば剛と仲良くなったのは夏のマラソン大会がきっかけだったから、本当ならばもう少し先のことだった。
剛はいきなり話しかけられて、かなり不振がっていたけど、すぐにまた視線をアニメ雑誌のほうへと戻す。
「まあ、呼び方なんてなんでもいいけどさ。じゃあ、俺も今日から山本さんじゃなくて名前で呼んでいい?」
剛はパラパラと雑誌のページをめくりはじめた。そして……。
「山本さんって、この子にそっくりなんだよね」
そう言って指さしたのは、黒髪でセーラー服を着たいわゆる萌え系のキャラクターの絵だった。
私は「あはは……」と、苦笑いを返すだけ。
そうそう。剛はこんな感じだった。
私とは趣味も思考も違って絶対に関わることはないだろうと思ってたから、まさか剛が私の一番の理解者になってくれるなんて、当時は考えもしなかったな……。



