そう笑ったあと隣の席へと視線を変えて、減ることのないビールジョッキを見つめる。
「でも、そういう未来もあったかもしれないよね」
声がわずかに震えた。
私たちは津崎がいなくなった理由を知らない。
誰も真実なんて分からないのに、もういないということだけが現実として残って、そのあったかもしれない未来を思い描いてしまうのだ。
10年経っても消えるこのない、津崎の存在。
まさかこんなに長い間話題にされるなんて、津崎本人も考えていなかったかもしれないね。
でも、あの青春の中で、津崎はそれだけ大きな人だった。影響を与えるぐらい、私の人生を変えるぐらい大切だった。
「……津崎は、今の私を見たら呆れるかな」
なんの目標もなくて、前に進むことのできない私を。
「やっぱり来月に一緒に帰ろう」
騒がしい店内で、やけにその言葉はクリアに響いて、聞き流すこともできなかった。
「気持ちに区切りなんてつけなくてもいいけど、きっかけは必要だよ。それはきっと島に行って、津崎に会いにいくことだと俺は思う」
次に声が震えたのは剛のほう。
私の答えは「考えておく」だった。
簡単に頷けない。だって、まだ認めてない。ただ単純に、津崎がいなくなったことを受け止めるのが怖いのだ。



