ばいばい、津崎。



「なんでも相談しろよ」


……剛がこんな真剣な顔をするなんて珍しい。

溜め込むばかりでなにも言わない私の捌け口になってくれようとしてるのか、それとも今日の私はいつもより不安感だと勘づかれてしまったのか。


夏のせいで悪化する体調不良と、まだ耳に残っている津崎が好きだった曲と、久しぶりに会った友達と、その出来事の全てがごちゃ混ぜになっていて、こんな強いお酒にまで手を出してしまった。


剛の言葉にぐっと涙腺が弱くなったけれど、泣くことが苦手な私は掴まれている手をゆっくりとほどいた。


「奥さんに怪しまれるよ。今流行りの不倫だって」

こうして、明るく流してしまうのが私の悪い癖。


「はは、思われねーよ!飲みに行くのも相手が皐月なら機嫌よく了承してくれるよ」

「その油断が危ないと思うなー」

「じゃあ、俺のことカッコいいって思ったことある?」

「ごめん。一度もないや」


場が和んだところで、剛はビールを追加注文した。そしてそれを飲むわけでもなく、私の横の空席になっているテーブルの上に置く。

「健のぶん、忘れてた」

そう言って、軽くジョッキを当てた。

きんきんに冷えているビール。お酒を飲む津崎は知らないはずなのに、美味しそうに飲んでいる姿が頭に浮かんで、また目頭が熱くなる感覚がした。


「……津崎は、どんな大人になってただろうね」

お酒を飲んでる姿は想像できるのに、26歳になってる津崎は想像することができない。

私の中にいる津崎はあの島のコバルトブルーがよく似合う少年のままだ。


「健は不良だったけど根は真面目だったから、案外サラリーマンにでもなってるんじゃない?外周りの営業とかさ」

「はは、似合わない!」