ばいばい、津崎。



「津崎はみんなにも感謝してると思う。だって津崎、息を引き取る寸前まで、笑ってたもん」


みんなと会えて良かったって。つまらなく死んでいくはずが楽しすぎてもっと生きたくなったって。

でも後悔はないって、本当に最後まで笑顔だった。


「うん。笑ってた」

哲平が瞳に込み上げた涙を拭う。


「俺たちは健太のぶんまで、精いっぱい生きなきゃな。健太に呆れられないようにさ」

「そうだね」

次に涙を拭いたのは私。

 
「皐月!哲平!なにしてるの?早くこっちにおいでよー!」

美貴が手招きをしながら、大声で叫んでいた。私たちは顔を見合わせて「今行くよ!」と声をハモらせながら防波堤の先端へと歩く。


「はい」と、剛がみんなで事前に用意していた花束を私に渡してくれた。

それは紫色の小さな花。名前は紫苑。(しおん)
みんなで考えて、花束はこれにしようと決めたのだ。


花言葉は、あなたを忘れない。


花束にそれぞれが津崎に宛てた手紙を差し込み、内容はお互いに知らないけれど、みんな津崎に話したいことがたくさんあるようで、封筒は厚かった。

最後に手紙を添えたのは、私。


津崎は遺言で、骨はこの海に撒いてほしいと言った。津崎のお母さんもあの子は海が好きだったからと承諾してくれて、みんなでこの防波堤から撒いた日のことが、まるで昨日のようによみがえってくる。


頭に浮かぶのは、いつだってコバルトブルーが似合うきみ。いつまでも、いつまでも、私の心にいる愛しい人。


私は紫苑の花束を海へと投げた。

ゆらゆらと、波に身を任せるように漂い、きっと津崎の元へと届くだろう。