ばいばい、津崎。




両親は私が中学生の時に離婚してして、長野県に住んでいるお父さんは2年前に再婚して、現在はその人の連れ子と一緒に暮らしている。


「まだ子ども中学生だって。思春期真っ盛りの年頃だけど、もう本当の親子みたいに仲良しらしいよ」

その関係が羨ましいと感じてしまうのは、お父さんと過ごすことができなかった中学時代があるからだと思う。

お父さんは今でもことあるごとに『皐月は俺の娘だから』と言ってくれる。


『だから小さなことでも頼っていい。それでいつでも遊びにおいで』と、慣れないメッセージを送ってきてくれるけど、お父さんの新しい家庭に私が足を踏み入れるのは違う気がした。

お父さんが選んだ人ならば奥さんが良い人なのは間違いないけれど、やっぱり私は他人だし、気兼ねなく幸せな生活をしていてほしいから。


「皐月って、けっこう優しいよな」

「なに、突然」

私は照れを隠すように日本酒を口につける。


「何気に高校の時からいいヤツだって見抜いてたよ。お前は俺のことキモいって思ってただろうけど」

「あはは」


笑みを浮かべながら、脳裏によみがえるのはみんなで過ごした青春の日々。

思い出は美化しやすい、なんて言うけれど、あんなにも濃い毎日を過ごしたことは、後にも先にもないってぐらい。


「……楽しかったよね、本当に」

私は言葉とは真逆な声のトーンで、静かにお猪口(おちょこ)を置いた。